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Society 5.0とは? IoT・AI・情報社会との違いを解説【情報Ⅰ】

文:野澤 嘉孝 (ソフトウェアエンジニア/プログラミングスクール Sandbox 代表)

Society 5.0とは? IoT・AI・情報社会との違いを解説【情報Ⅰ】

この記事の概要

「Society 5.0って、AIやロボットがたくさんある社会のこと?」 それだけではありません。Society 5.0は、現実世界とデジタルの世界を結び付け、経済の発展と社会課題の解決を両立させようとする、人間中心の未来社会像です。 先に結論:技術の名前より、暮らしがどう変わるかを考えよう

「Society 5.0って、AIやロボットがたくさんある社会のこと?」

それだけではありません。Society 5.0は、現実世界とデジタルの世界を結び付け、経済の発展と社会課題の解決を両立させようとする、人間中心の未来社会像です。

先に結論:技術の名前より、暮らしがどう変わるかを考えよう

  • 現実のデータを使い、現実の困りごとを減らす。 たとえば、バスの位置を分析して到着を予測し、移動を助ける。
  • IoT・AI・クラウドなどは、そのための手段。 技術を導入すること自体がゴールではありません。
  • 使いにくい人を取り残さない。 便利さだけでなく、情報格差やプライバシーも考える必要があります。

この記事では、教科書の定義に戸惑うユウキと、スマホでの手続きに困る祖母の物語から、社会の目標と、それを支える技術をつなげて学びます。

動画と合わせて学ぶ人は、情報Ⅰサバイバルの再生リストも活用してください。

Society 5.0の定義は、3つに分けると読める

情報の小テストで「Society 5.0を説明せよ」と出題され、ユウキの解答欄は白いまま。教科書には、サイバー空間、フィジカル空間、高度な融合……と長い説明が続きます。

ユウキ「もう無理。この教科書、日本語じゃない。」
Sandy「ちょお待ちぃ! 長い一文は、切って考えてみよか。」

これは動画内の架空の物語です。まず、定義の要点を3つに分けましょう。

①現実とデジタルを高度に結び付ける、②経済発展と社会課題の解決を両立する、③人間中心の社会を目指す、の3点です。

Society 5.0を現実とデジタルの融合、経済と社会課題の両立、人間中心の3点で整理する図

技術の活用を、人間中心の社会という目的につなげて考えます。

サイバー空間は、コンピューターやネットワーク上で情報を扱う空間。フィジカル空間は、人やモノが存在する現実の世界です。

たとえば、現実の交通状況をデータとして分析し、運行や案内の改善に返す。これなら、通信機器を導入するだけでなく、移動しにくいという暮らしの課題にもつなげて考えられます。

Society 5.0は2016年の第5期科学技術基本計画で提唱されました。2021年の第6期計画では、持続可能性や強靱性、安全・安心、多様な幸せの実現という方向も示されています。完成済みの社会を機械的に判定するラベルではなく、目指す社会の姿として理解しましょう。

Society 1.0〜5.0と、第4次産業革命の違い

内閣府の説明では、Society 5.0を、狩猟・農耕・工業・情報社会に続く社会として位置付けています。

狩猟、農耕、工業、情報社会とSociety 5.0の位置付け

社会像を説明する整理で、全地域が同じ日に次の段階へ移る年表ではありません。

区分

社会の呼び方

理解の手掛かり

Society 1.0

狩猟社会

狩りや採集

Society 2.0

農耕社会

農耕や定住

Society 3.0

工業社会

機械による生産

Society 4.0

情報社会

コンピューターや情報ネットワーク

Society 5.0

目指す未来社会

現実とデジタルの融合による課題解決

各段階は社会の特徴を捉えるための整理です。関連する技術やサービスの導入は、分野や地域によって進み方が違います。

似た言葉の第4次産業革命は、IoT、AI、データ、ロボットなどによる技術・産業の変化に注目したものです。Society 5.0は、それらの技術も社会生活へ取り入れ、どのような社会をつくるかという構想です。数字の4と5だけで対応させないようにしましょう。

IoT・ビッグデータ・AI・クラウドはどうつながる?

ユウキは「4.0もネット社会なら、5.0は何が違うの?」と疑問を持ちます。そこで、バスの接近を知らせる仕組みを考えてみます。

現実からデータを集め、蓄積・分析し、その結果を人の行動や現実の仕組みに反映する流れが、理解の手掛かりになります。

バスの位置計測から蓄積、到着予測、案内や運行改善へ返るデータの流れ

集めた情報を分析し、結果を現実の行動やサービス改善に反映します。

  1. 現実で集める:バスの位置や交通状況を計測し、送信する。
  2. デジタルの世界で扱う:データを蓄積・分析し、到着時刻などを予測する。
  3. 現実に返す:乗客への案内や運行の改善に役立てる。

この流れに関係する言葉を、バスの例で整理すると次のようになります。

用語

何を指す?

バスの例で考えると

IoT

モノをネットワークにつなぎ、計測や制御などを行う仕組み

車両の位置情報を送る

ビッグデータ

量・種類・生成速度などの面から、扱い方に工夫が必要となるデータ群

多数の車両の記録や天候・交通情報などを組み合わせる

AI

予測・分類などに用いる技術の広い呼び方

到着予測などへの活用が考えられる

クラウド

保存領域や計算資源、アプリなどをネットワーク経由で利用する仕組み

データの保存や分析に必要な資源を利用する

これは役割を理解するための例です。どのバス案内にも、必ず全技術が使われているという意味ではありません。

「人が情報を探す」だけでなく、「現実の情報を分析して必要な支援へ返す」という見方です。ただし、通知機能は以前からあります。通知が届くこと一つで、Society 4.0と5.0を厳密に二分できるわけではありません。

IoT:モノをネットワークにつなぐ

IoTはInternet of Things、モノのインターネットです。センサーや通信機能を持つ機器などをつなぎ、現実の状態をデータとして扱ったり、離れた場所から制御したりします。

温度を測って送るだけでなく、分析結果に応じて設備を動かす側にも使えます。「IoT=集めるだけ」ではありません。また、スマホを使ったサービスがすべて同じ意味でIoTになるわけでもありません。

AI・機械学習:データを使って予測や分類をする

AIは人工知能に関わる技術の広い呼び方で、機械学習はその一分野です。機械学習では、データからパターンを学び、分類や予測などに利用します。

「AIが考える」は覚え方の比喩で、人と同じように理解して必ず正解を出すという意味ではありません。使うデータや目的に応じ、結果を検証する必要があります。

バスの到着予測にもさまざまな実装があり、必ず機械学習で動いていると断定はしません。

クラウド:保存だけでなく機能や計算資源も利用する

クラウドは、ネットワークを通じて、保存領域、アプリケーション、計算資源などを必要に応じて利用する仕組みです。

写真の保存も一例ですが、端末をなくしても必ず写真が残るわけではありません。アップロード済みか、同期・削除・バックアップがどう設定されているかで変わります。「ネットの向こうに置けば自動的に安全」ではないことも押さえましょう。

ビッグデータの3V:量・種類・速さ

ビッグデータを理解する代表的な観点が、Volume(量)、Variety(種類)、Velocity(速さ)の3Vです。

ビッグデータの代表的な特徴である量、種類、速さの3V

3Vは量・種類・速さを捉える枠組みで、共通の数値基準ではありません。

3V

意味

交通の例

Volume

データの量

多数の車両について長期間にわたる記録がある

Variety

データの種類の多様さ

位置・時刻の数値、天候の記録、道路の画像などがある

Velocity

データが生成・流入する速さや、処理に求められる速さ

車両の位置が次々に更新され、素早い処理が必要になる

3V以外に、変動性などの観点を加える整理もあります。NISTの参考資料も変動性を含めており、特徴の整理は3つだけに限定されません。

3Vは特徴を整理する枠組みで、「3つ全てが特定の数値以上なら合格」という判定式ではありません。ビッグデータに、共通の「何TB以上」という境界があるわけでもありません。

また、データはIoT機器だけでなく、取引記録や文章など、さまざまなところから生まれます。「集めるIoT、貯めるビッグデータ」という覚え方を、厳密な定義と混同しないようにしましょう。

VR・AR・MR・XRの違い

VRは仮想の空間を体験する技術、ARは現実に情報を重ねる技術として整理すると、具体例を考えやすくなります。

VR、AR、MRの体験の特徴とXRという総称の関係

現実と仮想の体験の違いを見て、MRの用語の幅にも注意します。

用語

基本の捉え方

例

VR:仮想現実

仮想的な環境を体験する

仮想の展示室を歩く

AR:拡張現実

現実の映像や視界に情報を重ねる

スマホに映る展示物へ解説を重ねる

MR:複合現実

現実とデジタルを融合して扱う

現実の机の位置に合わせて仮想物体を配置・操作する

XR

これらをまとめて指す言葉として使われる

複数の技術領域を総称する場面

MRは、ARなども含む広い意味で使われることがあり、用語の範囲は資料や製品で異なります。ARにも現実空間を認識するものがあるため、「位置を認識したら必ずARではなくMR」とは決められません。

「VRはゴーグル、ARはスマホ」と機器だけで分けることも避け、どんな現実・仮想の体験を提供するかに注目しましょう。

自動運転は、レベル4と5の条件の違いに注意

自動運転も、現実を計測し、判断の結果を車の動きへ返す技術の一例です。運転自動化のレベルは0〜5の6段階。0は運転自動化なし、1・2は運転支援で、運転者が周囲を監視し、運転に責任を持つ必要があります。

レベル

システムが運転する条件

運転の継続が難しくなったら?

3

決められた条件の中

システムの要請などに応じて人が引き継ぐ

4

決められた条件の中

システムが安全な停止などの対応も担う

5

レベル4のような運行設計領域の限定を設けない

システムが対応を担う

運行設計領域とは、そのシステムが動作するよう設計された道路・地域・速度・天候などの条件です。3と4は「引継ぎなどを誰が担うか」、4と5は「走れる条件の限定があるか」に注目しましょう。 レベル5も、災害などあらゆる状況で走行を続けられるという意味ではありません。

日本では、レベル4に相当する特定自動運行の許可制度が2023年4月に施行されました。制度の施行と、各サービスが実際に運行を始めることは別です。

情報社会の光と影:便利さとリスクをセットで見る

帰宅したユウキは、祖母から相談されます。

祖母「時刻表、ここのコードを読むんですって。病院の予約もスマホだけになるらしいのよ。」
ユウキ「読めるけど……それ、みんなができるわけじゃないよね。」

これも架空の物語で、特定の病院やバス会社の方針を紹介するものではありません。

データ活用には利点がある一方、次のようなリスクも考える必要があります。

  • 遠隔でつながれる一方、不正アクセスや被害拡大への対策が必要になる。
  • 記録を活用できる一方、プライバシーや過剰な追跡が問題になり得る。
  • おすすめを個別化できる一方、情報の偏りが強まる場合がある。
  • 作業を自動化できる一方、仕事や役割の変化への対応が必要になる。

「データを集めたら必ず監視社会」「おすすめは必ず偏る」と決めつけるのでもありません。収集範囲、利用目的、設定、運用などによって影響が変わります。

デジタルデバイド:「持っている」だけでは埋まらない

デジタルデバイドは、情報通信技術へのアクセスや活用機会、能力などの違いから生じる格差です。

地域、個人や集団、国際間の情報格差と、学習支援や別の利用手段の例

端末を持つだけでなく、使いやすさ、学ぶ機会、代替手段も重要です。

地域間、個人・集団間、国際間などで生じます。具体的には、次のような壁があります。

壁

例

対応の例

接続・費用の壁

回線が届かない、端末や通信料を負担できない

通信環境の整備、利用できる端末や費用面の支援

操作・理解の壁

文字が読みにくい、手続きが複雑、使い方を学ぶ機会がない

画面の改善、読み上げへの対応、使い方の支援

利用手段の壁

スマホを使えないと予約できない

電話・対面などの別の手段も用意する

端末を配るだけで、すべての格差が解消するわけではありません。

年齢だけで「使える・使えない」を決めることもできません。利用者の状況と、提供するサービスの設計を確かめることが大切です。

物語では、ユウキが祖母とバスの接近通知を設定し、予約操作も一緒に試しました。さらにサービスを作る側なら、画面や読み上げへの配慮、学ぶ機会、電話・対面などの別の利用手段も検討できます。

Sandy「使えへん人がおるなら、本人に頑張れで終わらんとこ。仕組みの側も変えられるで。」

本人が選べる使いやすい手段や、必要に応じた支援を用意することも、「人間中心」の社会づくりです。スマホ操作が難しいという理由で、必要なサービスを受けられなくしないことが大切です。

練習:展示物に解説を重ねるなら?

文化祭で、スマホに映った実物の展示物へ、名称や解説を重ねて表示します。この特徴を最も直接的に表す言葉はどれでしょう。本記事のオリジナル学習例で、実際の共通テスト問題ではありません。

  • A:AR
  • B:ビッグデータ
  • C:クラウド

答えはAです。 現実の展示物が映る画面に情報を重ねる特徴は、ARとして説明できます。裏側でクラウドを利用する可能性はありますが、問われている表示の特徴とは別です。ビッグデータも、情報を重ねる表示方式の名前ではありません。

一つのサービスには複数の技術が組み合わさります。「何の側面を聞かれているか」を見て答えましょう。

まとめ:技術の名前と、実現したい社会をつなげよう

  • Society 5.0は、現実とデジタルを結び付けて課題を解決する、人間中心の社会像。
  • IoT、AI、ビッグデータ、クラウドは役割が異なり、組み合わせて使われる。
  • ビッグデータの3Vは量・種類・速さ。
  • XRの用語は体験の特徴から理解し、境界の幅にも注意する。
  • 技術の利点だけでなく、プライバシーや情報格差への対策も考える。

「新しい機械を導入したか」から一歩進めて、「誰の、どんな困りごとが減ったか」を考えてみてください。それが、長い定義と身近な暮らしをつなぐ手掛かりになります。

自分でWebやアプリを作る側にも挑戦したい人は、プログラミングスクールSandboxの案内をご覧ください。

参考資料

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野澤 嘉孝

この記事を書いた人

野澤 嘉孝

ソフトウェアエンジニア/プログラミングスクール Sandbox 代表

ソフトウェアエンジニア。同志社大学理工学部を経て、京都大学大学院で核融合発電の基礎研究(プラズマ物理)に従事。高校生向け数学塾の講師、大学での物理実験の授業を通じて延べ500名以上の学生をサポート。現在は業界特化型SaaSの開発に携わりながら、小中高生向けプログラミングスクール Sandbox を運営。

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