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情報伝達の歴史と情報の3つの特性|狼煙からSNSまで【情報Ⅰ】

文:野澤 嘉孝 (ソフトウェアエンジニア/プログラミングスクール Sandbox 代表)

情報伝達の歴史と情報の3つの特性|狼煙からSNSまで【情報Ⅰ】

この記事の概要

「写真は一瞬で送れるのに、一度広まると取り戻すのは難しい。どうして?」 その理由を考えるには、伝え方の歴史と、情報そのものの特性を分けて見ると分かりやすくなります。 先に結論:伝えやすくなった情報は、広がった後の管理も難しい 伝達手段の発達:文字・印刷・電気通信などにより、遠くへ、後の時代へ、多くの人へ伝えやすくなった…

「写真は一瞬で送れるのに、一度広まると取り戻すのは難しい。どうして?」

その理由を考えるには、伝え方の歴史と、情報そのものの特性を分けて見ると分かりやすくなります。

先に結論:伝えやすくなった情報は、広がった後の管理も難しい

  • 伝達手段の発達:文字・印刷・電気通信などにより、遠くへ、後の時代へ、多くの人へ伝えやすくなった。
  • 情報の3つの特性:伝えても元に残る「残存性」、コピーしやすい「複製性」、人や媒体を通して広がる「伝播性」がある。
  • 発信前の確認:元の投稿を消しても、他の人が保存したコピーまで消せるとは限らない。

今回は、狼煙からSNSまでの変化をたどり、連絡手段の使い分けと、写真を共有するときの注意点を学びます。

「情報Ⅰサバイバル」の再生リスト

半年待った手紙と、3分で1万回見られた投稿

土曜の図書館。歴史のレポートを調べていたユウキは、明治の終わりに海外へ渡った人の手紙の複製を見つけます。説明書きには「返事が戻るまで、およそ半年」。

そのとき、スマホにハルカの投稿が届きました。3分前の投稿が、もう1万回以上見られています。

ユウキ「……半年と、3分」

Sandy「ちょお待ちぃ!」

ユウキ「え、今なんか悪いことした?」

Sandy「いや。今日は止めるもんがひとつもないわ」

ユウキ「じゃあなんで叫んだの」

Sandy「癖や」

今回はシーズン1の最終回。事件を止める代わりに、人類の「伝え方」を並べます。なお、この手紙と投稿のエピソードは台本上の物語です。半年は返信までの期間、3分は投稿後の経過時間なので、通信速度の倍率を計算するための実測値ではありません。

情報伝達の進化を「4つの壁」で整理する

言葉、文字、印刷、電気通信という流れに沿って考えると、何が変わったかをつかみやすくなります。さらに、インターネットやSNSは、多くの人が発信に参加する機会を広げました。

文字は時間、印刷は人数、電気通信は距離、インターネットやSNSは発信の機会という制約を小さくしてきました。

文字・印刷・電気通信・インターネットが小さくした制約を、時間・人数・距離・発信の機会で整理した図

伝達の制約は小さくなってきたが、すべてなくなったわけではない。

手段

小さくなった制約

できるようになったことの例

文字による記録

時間

その場にいない人や、後の時代の人が読める

印刷

複製の手間・届けられる人数

同じ内容の本や資料を多数用意しやすい

電気通信

距離による所要時間

手紙を運ぶより短時間で遠方へ伝えられる

インターネット・SNS

発信や共有への参加のしにくさ

個人も広く投稿・共有しやすい

これは主な変化を覚えるための整理です。各手段には複数の役割があり、今も費用や設備などの制約は残っています。

言葉と文字:その場の会話から、あとで読める記録へ

道具を使わない会話は、基本的に声が届く範囲で行います。ただし、聞いた人が覚えて別の人に話せば、内容を受け継ぐこともできます。「音声だから何も残らない」とまで考える必要はありません。

文字を媒体に記録すると、相手がその場にいなくても読めます。保存状態や文字の解読などの条件はありますが、ずっと後の人に内容を伝えられるようになります。今では音声や映像も録音・録画して残せます。

印刷:同じ内容を、多数の人へ

印刷は、同じ文章や図を繰り返し複製することを助けました。一冊ずつ手で書き写す場合と比べ、多数の同じ内容を用意しやすくなったのです。

15世紀半ばのヨーロッパでは、グーテンベルクらによる活版印刷が発展し、1455年ごろの聖書が代表例として知られます。ただし、印刷や活字そのものが、そこで世界で初めて生まれたわけではありません。中国や朝鮮半島には、それ以前の印刷・活字の歴史があります。

電気通信:内容を運ぶために、人が移動しなくてよくなる

電信は電気的な信号で文字などの内容を伝え、電話は離れた相手と音声をやり取りします。1844年にはモールスの電信によるワシントン―ボルチモア間の通信が行われ、1876年にはベルが米国で電話に関する特許を取得しています。

手紙そのものを目的地まで運ぶ方法と比べ、遠距離へ短時間で伝えやすくなりました。もちろん、通信回線や機器、電力などは必要です。「距離の影響が完全にゼロになった」という意味ではありません。

狼煙と飛脚:速ければ何でも伝えられる?

狼煙(のろし)は、煙などを使った視覚的な合図です。見える範囲の相手へ知らせたり、中継して伝えたりします。

狼煙は共有した合図を伝える方法で、飛脚などが運ぶ手紙は、記録した詳しい内容を届ける方法です。

狼煙の合図と、飛脚などが運ぶ手紙の特徴を比べた図

伝えたい内容と、届く条件に合わせて方法を考える。

例えば「あの合図は危険を知らせる」と決めておけば、短い合図でも意味を伝えられます。一方、事情を詳しく説明したり、あとから文章を読み直したりするには、手紙などが適しています。

Sandy「『急いで来て』の合図と、来てほしい理由を3枚に書いた手紙。得意な仕事がちゃうねん」

狼煙の伝わり方は見通しや天候、合図の決め方などに左右されます。手紙にも距離や交通条件、費用の制約があります。「昔の手段はすべて遅い」「速さと内容は必ず二者択一」と暗記するより、何を、誰に、どんな条件で伝えるかを比べましょう。

放送・インターネット・Web・SNSの違い

ラジオやテレビの放送は、放送局から多数の受け手へ、同じ番組を同時に届ける代表例です。日本ではラジオ放送が1925年、テレビの本放送が1953年に始まりました。

そして、インターネットは多数のネットワークを相互につなぐ基盤です。Web(WWW)は、その上でWebページなどを利用する仕組みの一つ。電子メールもインターネットを利用しますが、Webそのものと同じではありません。

インターネットという通信の基盤と、Webという情報共有の仕組みは、区別して考えます。

インターネットの基盤とWebの仕組みを分け、1969年・1989年・1991年・1993年の出来事を示した図

ARPANETの通信とWebの提案・公開は、それぞれ別の出来事。

年

出来事

区別したい点

1969年

ARPANETでUCLAからSRIへの最初の通信

現在のインターネットにつながる前身のネットワークの出来事

1989年

CERNのティム・バーナーズ=リーがWebを提案

Webの構想が提案された年

1991年

Webソフトウェアを公開し、インターネット上でも紹介

外部へ利用が広がっていく段階

1993年

CERNがWebソフトウェアをパブリックドメインに公開

誰でも無償で利用できる形での普及を後押し

これらは、それぞれ違う出来事の年です。「1969年に今のWebが完成した」「1991年に世界中の誰もが使えるようになった」と一つにまとめないようにしましょう。

SNSやスマホの普及によって、情報を受け取った人が投稿・返信・共有をする機会も広がりました。ただし、SNSより前にも手紙や電話で人々は相互に発信していました。SNSが史上初めて双方向のやり取りを生んだわけではありません。

また、機器や回線の費用、言語、使い方の知識、サービスの規約などの制約は今もあります。発信しやすいことと、全員の投稿が同じように届くことも別です。

伝達手段を比べる3つの軸

歴史上の名前を覚えるだけでなく、今のサービスを使い分けるときにも役立つ物差しがあります。

伝達手段は、「誰から誰へ」「同期か非同期か」「一方向か双方向か」の3つの軸で比較できます。

手紙・電話・放送・SNSを人数、同期と非同期、方向の3つの軸で比べた表

非同期でも双方向のやり取りはできる。

軸

考えること

例

人数の関係

1対1、1対多、多対多など

2人の電話は1対1。多数が投稿・返信する場は多対多

時間の関係

同時に参加する同期か、別の時刻に読み書きできる非同期か

電話は同期。手紙の往復は非同期

やり取りの向き

一方向か、返答できる双方向か

放送波による番組の送信は一方向。電話の会話は双方向

「非同期=一方向」ではありません。手紙はその場ですぐ返答できなくても、返信を出せば双方向のやり取りになります。

SNSも使い方で変わります。投稿を後で読むなら非同期、ライブ配信や通話なら同期的に使えます。ダイレクトメッセージなら1対1の場合もあります。

テレビ番組への電話やSNSでの感想投稿は、放送とは別の経路を使ったやり取りです。どの機能、どの場面を比べているかを決めると、分類の混乱を減らせます。

残存性・複製性・伝播性とは

情報は、物のように「相手へ渡したら、必ず自分の手元からなくなる」とは限りません。この違いを3つの特性で整理します。

残存性は伝えても元に情報が残る性質、複製性は同じ内容を複製しやすい性質、伝播性は人や媒体を通して情報が伝わり広がる性質です。

残存性・複製性・伝播性を写真の送信・保存・共有の例で整理した図

3つの特性を、普段の写真の共有から考える。

特性

写真を送る例

注目すること

残存性

友達に送っても、自分の端末に元の写真が残る

伝えることは、元の情報を失うこととは限らない

複製性

友達が写真を保存し、コピーが増える

同じ内容を複数用意できる

伝播性

友達から別のグループへ共有される

情報が届く相手や範囲が広がる

覚えるなら、「元に残る・コピーできる・広がる」。同じ写真の送信でも、3つの特性が重なって関係します。伝播性を「伝搬性」と表す教材もあります。

デジタルデータは、同じビット列のまま複製することが可能です。

複製の際に画像を縮小したり、非可逆圧縮をしたりすると、データは変わり得ます。「何をしても一切劣化しない」という意味ではありません。また、すべての投稿が必ず瞬時に広がるわけでもありません。

この3つは代表的な特性です。情報の特徴が3つだけという意味ではなく、「形がない」といった特徴から整理する教材もあります。

投稿を消したら、写真も全部消える?

ユウキ「じゃあ、間違えて出した写真は、投稿を消せば解決?」

Sandy「元の投稿を消すのは大事や。せやけど、別の人が保存したコピーまでは、自分のボタンで消せへん場合があるねん」

元の投稿を削除しても、保存された画像や再投稿など、別のコピーが残ることがあります。

元の投稿を削除しても相手の保存画像や再投稿が残る可能性を示す図

削除や通報を進めても、すべてのコピーの回収を保証できるとは限らない。

だからといって「削除しても無意味」「一度出したら、どんな場合も永久に消えない」と考える必要はありません。公開の停止や削除、サービスへの通報などは、被害の拡大を抑えるための対処になります。

重要なのは、公開後にすべてのコピーを完全に回収できるとは限らないことです。出す前には写真に写る人の意向、氏名や場所が分かる情報、公開範囲などを確認しましょう。困ったときは一人で抱えず、保護者や先生などにも相談できます。

情報の特性は、写真の共有や誤情報の拡散を理解する手掛かりになります。ただし、乗っ取りや詐欺などの原因をすべてこの3つだけで説明できるわけではありません。認証の仕組み、人の判断、サービスの設計なども関係します。

練習:文化祭の連絡手段を説明してみよう

次はこの記事のオリジナル学習例です。実際の入試問題ではありません。

文化祭の実行委員が、次の3つの連絡をしました。どの特性や伝達の軸が関係するでしょうか。

  1. 担当者と電話をつなぎ、その場で質問と返答をした。
  2. 連絡用掲示板に日程を書き、メンバーが都合のよい時刻に読んで返信した。
  3. ポスター画像を友達に送り、自分の端末にも残した。友達は別のグループへ共有した。

場面

解説

1:電話でその場で質問・返答

2人なら1対1。同時に参加するので同期、返答できるので双方向

2:掲示板を後で読み、返信

非同期でも双方向。多数が投稿・返信すれば多対多にもなる

3:画像を送り、保存・再共有

元が残る点は残存性、コピーを作れる点は複製性、共有先が広がる点は伝播性

「いつ参加するか」と「返答できるか」は別々に判断します。

Sandy「『あとで読む=一方通行』とせんことやな。いつ読むかと、返事ができるかは別の軸や」

まとめ:便利な伝え方を、目的に合わせて使う

  • 文字は記録、印刷は多数への複製、電気通信は遠距離への迅速な伝達を助けました。
  • インターネットとWebは別のものです。SNSの使い方によって人数・時間・向きの関係も変わります。
  • 情報には残存性・複製性・伝播性があり、公開後のすべてのコピーを管理できるとは限りません。

シーズン1の締めくくりとして覚えておきたい行動は、出す前に確認する、広げる前に元の情報をたどる、コピーできることと利用してよいことを分けて考えることです。安心して使える環境には、利用者の判断に加え、提供者の対策や制度も必要です。

翌週、ユウキはあの手紙の複製をスキャンして家族へ送ります。

祖母「……ずいぶん、急いだのねえ」

時代が変わっても、伝えたい相手がいることは同じ。これまでの回の情報の信頼性、著作権、セキュリティの話も、この「伝える力」とつながっています。再生リストで気になる回を振り返ってみてください。

Sandboxでは、ゲームやアプリ制作などを通して、情報技術を使い、作る経験を重ねられます。

参考資料

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野澤 嘉孝

この記事を書いた人

野澤 嘉孝

ソフトウェアエンジニア/プログラミングスクール Sandbox 代表

ソフトウェアエンジニア。同志社大学理工学部を経て、京都大学大学院で核融合発電の基礎研究(プラズマ物理)に従事。高校生向け数学塾の講師、大学での物理実験の授業を通じて延べ500名以上の学生をサポート。現在は業界特化型SaaSの開発に携わりながら、小中高生向けプログラミングスクール Sandbox を運営。

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