「ネットで見つけた推しのイラスト。保存はいいとして、SNSのアイコンにも使っていい?」
自分で楽しむための保存と、SNSで人に見せる利用は別です。
アイコンに使う前には、権利者がその使い方を認めているか確認しましょう。
先に結論:画像を使う前に確認したい3つのこと
- 保存と公開を分ける。 自分で見るための保存が認められても、SNSへの投稿まで自由になるわけではありません。
- 使い方に合った許可や利用条件を確認する。 「無料」「非営利」「出典を書いた」だけでは、利用できるとは決まりません。
- 引用は、説明や批評のために必要な範囲で使う。 飾りとして貼るだけでは、出典を書いても引用にはなりません。
第4話では、ユウキがイラストを保存し、アイコンに設定し、加工して投稿した事件から、この違いを学びます。その背景にある知的財産権や著作権の基本も整理しましょう。
動画で復習したい人は、情報Ⅰサバイバルの再生リストも活用してください。
推しのイラストを保存。それをアイコンにしたら?
夜、ユウキはイラスト投稿SNS「パレット」で、絵師「ソラアメ」の新作を見つけました。
ユウキ「やば、神絵……あとで見返そ。」
いったん端末に保存。そのあと「これ、アイコンにしたら映えるな」と設定し、さらにトリミングして文字を入れた画像も投稿します。
Sandy「ちょお待ちぃ! 同じ絵でも、何をするかで話が変わるで。」
パレット、ソラアメは、動画内の架空のサービス名・人物名です。ここでは、権利者から公開や加工の許可を得ていないケースとして考えます。
確認するのは「保存・公開・加工」という行為と、その目的・利用条件です。

「保存=常にOK」「公開=常に違法」ではない。
「勝手に使ったら捕まる?」に対しても、すぐに逮捕されると一律には言えません。著作権侵害には民事上の問題と刑事上の問題があり、成立する条件も違います。まずは、どんな権利が関係するのかを整理しましょう。
知的財産権とは? 著作権と産業財産権の違い
知的財産権は、創作活動で生まれる表現や発明、商品・サービスの信用を示す標識などを保護する権利の総称です。主なものに、著作権と産業財産権があります。
著作権は創作的な表現を、産業財産権は発明・デザイン・商標などを保護します。

産業財産権の4権は出願・登録が必要。ほかの権利もある。
権利 | 主な保護対象 | 基本の期間 |
|---|---|---|
特許権 | 発明 | 出願日から原則20年 |
実用新案権 | 物品の形状・構造・組合せに関する考案 | 出願日から10年 |
意匠権 | 物品・建築物・画像等のデザイン | 出願日から25年(2020年4月1日以降の出願) |
商標権 | 商品・サービスの目印となる名前やロゴ等 | 設定登録日から10年・更新可能 |
この4つが産業財産権です。権利は出願だけでは発生せず、設定登録が必要です。期間中の維持手続などもあり、表の年数は無条件の存続を保証するものではありません。特許には一定の延長制度もあります。
一方、著作権は、著作物を創作した時点で発生します。申請や登録、©マークを権利発生の条件としない仕組みを無方式主義といいます。
なお、知的財産権には育成者権などもあり、「著作権と産業財産権の2つだけ」ではありません。
Sandy「何を守る権利か。どうやって権利が生まれるか。セットで覚えよか。」
著作権が守るのは「創作的な表現」
イラスト、文章、音楽、プログラムなどは、創作性などの条件を満たせば著作物になります。プロかどうか、絵が上手いかどうかだけで決まりません。
ただし「空飛ぶ猫の話を作ろう」というアイデアそのものと、実際に描いたキャラクターや文章は別です。単なる事実・データ、ありふれた表現も、それだけで著作権による保護を受けるわけではありません。
著作者の権利には、人格的な利益を守る面と、財産的な利益を守る面があります。

人格権は譲渡できない。財産権は譲渡できる。
著作者人格権には、未公表作品を公表するか決める公表権、著作者名の表示方法を決める氏名表示権、意に反する改変から守る同一性保持権があります。他人には譲渡できません。
著作権(財産権)には、コピーに関する複製権、ネットでの公開に関する公衆送信権、創作的に作り変えることに関する翻案権などがあります。こちらは譲渡できるため、作った人と著作権者が違う場合もあります。
区分 | 何を守る? | 主な権利 | 他人に譲れる? |
|---|---|---|---|
著作者人格権 | 作者の名前や作品への思いなど、人格的な利益 | 公表権・氏名表示権・同一性保持権 | 譲れない |
著作権(財産権) | 作品のコピーや公開などを管理する、財産的な利益 | 複製権・公衆送信権・翻案権など | 譲れる |
たとえば、イラストの署名を切り取って転載すると、コピーや公開の権利だけでなく、名前の表示や改変も問題になり得ます。「少し加工したら自分の作品」にはなりません。
保護期間は原則「著作者の死後70年」
著作権は、創作から原則として著作者の死後70年まで保護されます。年数の計算は、死亡した年の翌年から行います。
映画、団体名義、無名・変名の著作物などには別のルールがあります。「ネットに載ってから70年」「作ってから70年」と一律には覚えないようにしましょう。
保存・アイコン・加工投稿は、どう違う?
私的使用のための複製と、SNSへの公開は別の利用です。

無料・非営利・出典表示だけでは、利用OKと決まらない。
自分で楽しむ目的で端末にコピーする行為は、著作権法の「私的使用のための複製」の条件を満たす場合、許諾なしで行えます。対象は個人的な使用や、家庭内その他これに準ずる限られた範囲です。「自分以外の人が1人でも見たら即アウト」という意味ではありません。
ただし、学校のクラス全体やフォロワー全員を、人数が少ないという理由だけで家庭と同じ範囲にはできません。また、違法にアップロードされたと知りながら行うダウンロードは、私的使用でも違法になる場合があります。対象や除外規定、刑事罰の条件は別に定められています。
ユウキの行為 | 考えるポイント |
|---|---|
あとで自分が見るために保存 | 私的使用の複製の条件と、入手元などを確認する |
SNSのアイコンとして公開 | 私的使用とは別に、複製・公衆送信などの許諾や例外を確認する |
トリミング・文字入れして公開 | 上記に加え、同一性保持権や、加工の程度に応じて翻案権も関係する |
「最初は自分用に保存したから、後から何に使ってもよい」とはなりません。 最初からSNS公開用に保存するなら、私的使用のための複製とは別に考えます。
また、私的使用のために作ったコピーを後から公衆に提示するなど、目的外に使った場合は、法律上、その時点で複製を行ったとみなす規定があります(著作権法49条)。これは、最初の保存が過去にさかのぼって違法になる、という説明ではありません。
逆に、権利者が「アイコン利用OK」と許諾していて、その条件内で使うなら、公開だから直ちに侵害というわけではありません。
ユウキ「ファイルの置き場所だけじゃなくて、使い方を確かめるんだ。」
Sandy「せや。『保存したから自由に使える』とはならへんねん。」
引用は「出典を書けばOK」ではない
公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道・批評・研究などの引用目的上、正当な範囲内で利用する場合、許諾なしで引用できます。
出典表示は大切ですが、それだけで転載が引用に変わるわけではありません。

文字数の比率だけで決まらない。改変や人格権にも注意。
レポートなどでは、次の観点から確認しましょう。
- 引用の必要性と範囲:その作品を取り上げる理由があり、目的に照らして適切な使い方か。
- 主従関係:自分の説明や批評が主で、引用部分がそれを支える関係か。
- 明瞭な区別:どこが自分の表現で、どこが引用か分かるか。
- 出所の明示:著作者名、作品名、掲載元など、出所を適切に示しているか。
「自分の文章が画像より何文字多ければOK」といった機械的な基準ではありません。目的や内容、使い方を合わせて考えます。
使い方 | 引用として考えるポイント |
|---|---|
レポートでイラストの構図を具体的に分析し、その説明に必要な画像を示す | 引用になり得る。上記の条件も確認する |
ポスターを華やかにするため、好きなイラストを飾りとして貼る | 飾りに使うだけでは引用にならない。出典を書いても同じ |
引用は「画像を使うために説明を添える」のではなく、「自分の説明に必要だから画像を示す」と考えると分かりやすくなります。
引用でも、意味を変える加工や著作者の意に反する改変を自由にできるわけではありません。元の表現を尊重しましょう。
二次創作は、公開前にガイドラインを確認
翌日の教室で、絵を描いていたハルカがつぶやきます。
ハルカ「私の絵、また名前を消されて転載されてる……。」
使う側だったユウキも、描いた人の立場を意識し始めます。
ファンアートは、自分で描いたから原作の権利が無関係になるわけではありません。原作の創作的な表現を利用する二次創作では、翻案権や、公表するときの公衆送信権などが問題になり得ます。一方、抽象的な設定やアイデアだけが共通する場合まで、すべて侵害になるわけではありません。
まず公式の二次創作ガイドラインを確認し、投稿先、販売、収益化、表記、加工などの条件を調べます。別の絵師のファンアートを転載したい場合は、原作側の条件だけでなく、その絵を描いた人の権利にも注意が必要です。
「みんなやっている」「黙認されていそう」は、自分への許諾を確認したことにはなりません。
親告罪なら、許可なく使っても大丈夫?
著作権侵害の刑事罰は原則として親告罪で、告訴がなければ起訴できません。ただし一定の例外があります。
これは「告訴されるまで合法」という意味ではありません。差止めや損害賠償などの民事上の問題とは分けて考えます。削除したり謝ったりするだけで、すべての責任がなくなるわけでもありません。
フリー素材・パブリックドメイン・CCを使い分ける
素材名の「フリー」ではなく、実際の利用条件を読みましょう。

CC=著作権放棄ではない。肖像・商標などの権利にも注意。
フリー素材は、統一された法律上の利用条件を表す名前ではありません。無料でも商用利用・加工・再配布などに制限がある場合があります。「無料だから何でもできる」と考えず、素材ごとの規約を確認します。
パブリックドメイン(PD)は、保護期間の満了などにより著作権による保護がない状態です。ただし、写っている人物の権利、商標、別の創作が加わった版など、ほかの権利まで消えるわけではありません。著作者の死後の人格的利益にも配慮が必要です。
クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスは、著作権を保持したまま、一定の条件で利用を認める仕組みです。主な条件は次のとおりです。
- BY(表示):作者名などの適切なクレジット、ライセンスへのリンク、変更した場合はその旨を示す。
- NC(非営利):営利目的での利用を認めない。
- ND(改変禁止):改変したものの共有を認めない。
- SA(継承):改変したものを共有するとき、指定された継承条件に合うライセンスを用いる。同じライセンスや、認められた互換ライセンスなど、選べるものは種類・バージョンによって異なる。
たとえば「CC BY」なら表示の条件、「CC BY-NC」なら表示と非営利の条件が付いています。実際には条件の組合せとバージョンを確認します。NDは「個人的な加工も一切禁止」と一律に読み替えず、ライセンスの内容を確かめましょう。CC0は、これら6種類のCCライセンスとは別の、権利放棄等のための仕組みです。
練習:文化祭ポスターに絵を載せるなら?
これは本記事のオリジナル学習例です。実際の共通テスト問題ではありません。
文化祭のポスターを学校外にも掲示します。好きな作品の公式イラストを、飾りとして載せたい場合、最も適切な行動はどれでしょう。
- A:出典を書けば使えると判断する。
- B:公式の利用条件を調べ、今回の用途が認められるか確認する。
- C:色を少し変えれば別の作品になると判断する。
答えはBです。 出典だけでは許諾にならず、飾りとしての掲載は引用として認められるとは限りません。加工すれば自由になるわけでもありません。「学校の行事だから何でも例外」とせず、使う場所と目的を含めて条件を確認します。
条件に合わなければ、必要な許可を取る、自作する、用途に合った別の素材を選ぶ方法があります。
まとめ:好きな作品も、自分の作品も守るために
- 著作権は創作的な表現を守り、創作した時点で発生する。
- 私的使用、SNS公開、加工では、確認する条件や関係する権利が違う。
- 出典表示・無料・非営利という理由だけで、利用できるとは決まらない。
- 引用の条件、公式ガイドライン、素材の利用規約を確認する。
事件の最後にユウキは、公式ガイドラインの条件を確かめ、自分で描いた絵を投稿します。大切なのは、作ることを諦めるのではなく、使える条件を知って創作することです。
利用規約の確認では、転載された説明だけで判断せず、公式の最新情報をたどりましょう。
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