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インターネットは誰のもの?仕組みとフェールセーフ・フールプルーフの違い【情報Ⅰ】

文:野澤 嘉孝 (ソフトウェアエンジニア/プログラミングスクール Sandbox 代表)

インターネットは誰のもの?仕組みとフェールセーフ・フールプルーフの違い【情報Ⅰ】

この記事の概要

部室のWi-Fiが止まった。 「インターネットの会社に連絡しよう」——でも、世界中のインターネットを一社で動かす会社はあるのでしょうか。 先に結論:多くの主体が管理し、故障にも備えている 全体を一社が運営しているわけではない。 インターネットは、多くの組織のネットワークをつないだものです。

部室のWi-Fiが止まった。

「インターネットの会社に連絡しよう」——でも、世界中のインターネットを一社で動かす会社はあるのでしょうか。

先に結論:多くの主体が管理し、故障にも備えている

  • 全体を一社が運営しているわけではない。 インターネットは、多くの組織のネットワークをつないだものです。
  • 各部分には管理者がいる。 学校のWi-Fi、接続回線、Webサービスなど、止まった場所に応じて相談先も変わります。
  • 故障を減らすだけでなく、起きた後も設計する。 機能を保つ、安全な状態に移る、一部を減らして続けるなど、目的に合う備えが必要です。

今回は文化祭前日のトラブルから、「誰が動かしているか」と「故障したらどうするか」を順に考えます。

Wi-Fiが止まった。相談先は「誰もいない」?

文化祭の前日。ユウキが部室で動画を開こうとすると、読み込みが止まりました。

ユウキ「インターネットの会社に文句を言おう」
Sandy「ちょお待ちぃ! まず、どこが止まっとるんや?」
ユウキ「え、Wi-Fiがつながらないんだけど」
Sandy「それだけで、世界中のインターネットが止まったことにはならへんで」

これは動画内の架空の物語です。Wi-Fiは、端末を近くのネットワークへ無線で接続するための仕組みで、インターネットそのものとは別です。

校内機器の故障、接続設定、外部回線、利用中のサービスなど、止まる場所はいくつもあります。Wi-Fiにつながっていても、外部回線が止まっていればWebサイトを開けない場合があります。

校内Wi-Fi、接続回線、Webサービスのそれぞれに管理や運営の担当があることを示す図

全体を一社が所有しなくても、設備やサービスごとに管理主体があります。

学校なら、まず先生やネットワーク管理者へ状況を伝えます。調べる範囲を絞ることを、ここでは「切り分け」と呼びます。

分かっている状況

確認する手掛かり

一台だけ接続できない

その端末の設定や接続状態

同じ場所の複数端末が接続できない

アクセスポイントや校内設備など

Wi-Fiには接続できるが、外部サイトが開けない

外部回線、DNS、アクセス制限など

一つのサービスだけ使えない

そのサービスの状態や利用条件など

これは原因を断定する表ではありません。確認できた状況を伝え、回線の問題なら管理者から契約先へ問い合わせる場合もあります。

インターネット全体の単一の窓口がないことと、障害の相談先がないことは別です。

ARPANETからインターネットへ:二つの節目

インターネットにつながる歴史の一つに、米国の研究用ネットワークARPANETがあります。

1969年10月29日、UCLAからSRIへ「LOGIN」を送ろうとしたところ、最初の「LO」が届いた後にシステムが停止しました。最初から何もかも順調だったわけではありません。

もう一つの大きな節目が、1983年1月1日のARPANETのTCP/IPへの移行です。異なるネットワークを接続する技術の発展において、重要な出来事でした。

時期

学習上のポイント

1969年10月29日

ARPANETで最初のホスト間通信

1983年1月1日

ARPANETがTCP/IPへ移行

一日で世界中のネットワークが突然つながったのではありません。研究や実装、運用の積み重ねがあって、現在のインターネットへ発展しました。「誕生日」を一つ覚えるだけでなく、何が変わったのかを押さえましょう。

網につながっていれば、絶対に止まらない?

複数の経路があれば、一部の回線が使えなくなっても、別経路で通信を続けられる場合があります。

BとDの間が故障しても、AからCとEを経由してFへ進める経路が残る概念図

別経路が残り、経路制御や容量などの条件を満たす場合に迂回できます。

ただし、代わりの経路が存在し、経路制御が働き、残った回線に必要な容量があることなどが条件です。自宅の外部接続が一本だけなら、その回線が切れたとき、家の機器だけで別経路へ飛び移れるわけではありません。

「中心をなくせば、どこが壊れても必ず動く」とは限りません。大きな通信事業者や重要な基盤への依存、共通する障害原因もあります。

パケットとプロトコル:小分けに運ぶための約束

パケットは、ネットワークでデータを運ぶときの単位です。データを適切な大きさに分け、宛先などの情報を付けて扱います。

プロトコルは、通信の手順やデータ形式などの約束事です。異なる組織の機器でも、対応する約束を共有することでやり取りできます。

ここで注意したいのは、「パケットは必ず一つずつ違う経路を通る」という説明です。同じ経路を通ることもありますし、経路や混雑の変化によって届く順番が変わることもあります。

また、IPだけで到着や順序が保証されるわけではありません。TCPでは、データの順序を管理する番号や確認応答、再送などを使って、信頼性のある通信を実現します。使う通信方式によって、必要な処理は異なります。

Sandy「小分けにしたら、それだけで全部無事に届くわけやない。届かんかったときの約束も要るんや」

インターネットとWebの違い:土台と、その上の仕組み

インターネットはネットワークの土台、Webはその上で情報を公開・参照する仕組みの一つです。

Web、メール、その他の通信が、ネットワークどうしを接続するインターネットの上で利用される図

Webはインターネット上の仕組みの一つで、土台そのものとは異なります。

Webページを見たり、メールを送ったり、通話をしたりするなど、インターネット上ではさまざまな仕組みが使われます。Webと組み合わせて動くアプリもありますが、「インターネット=Webページの集まり」とは限りません。

全体を一社が所有しない一方で、海底ケーブル、接続事業者の設備、学校のルータ、サービスのサーバなどは、それぞれの主体が管理します。

ドメイン名などには登録・利用の仕組みもあります。「ネットの中は誰のものでもなく、何をしてもよい」という意味ではありません。

誰が決まりを作る?IETF・RFC・ICANN

インターネットは、組織どうしが好き勝手な形式で通信しているわけではありません。技術の共通化や、識別子の調整が行われています。

名称

主な役割

IETF

インターネット技術の標準化などを進めるコミュニティ

RFC

技術仕様や運用上の知見などを公開する文書のシリーズ

ICANN

ドメイン名など、世界で一意である必要のある識別子の調整に関わる組織

IETFは公開の議論や実装経験などを重視し、ラフコンセンサスを形成しながら技術を検討します。参加者は個人として技術的な議論に参加します。

ただし、RFCのすべてがIETFで作られるわけではなく、すべてがインターネット標準でもありません。文書の区分や状態も確認する必要があります。

ICANNは識別子の仕組みの調整に関わりますが、家庭のWi-Fiを修理したり、すべての投稿を取り締まったりする運営本部ではありません。

発信者とサービス運営者にも役割がある

投稿の内容によっては、発信者が民事・刑事上の責任を問われる場合があります。サービス運営者にも、利用規約や法律に基づく対応の役割があります。

日本では、旧プロバイダ責任制限法の改正により、2025年4月1日から情報流通プラットフォーム対処法という名称になり、大規模事業者への新たな義務などが施行されました。指定された大規模プラットフォーム事業者には、権利侵害情報への対応の迅速化や、運用状況の透明化に関する措置が求められています。

「申出があればすべての投稿を必ず削除する法律」ではありません。全体の単一の所有者がいなくても、各部分には運営や責任の仕組みがあるのです。

フォールトアボイダンスとフォールトトレランスの違い

ここまでは、多くの主体がインターネットを動かしている話でした。ここからは、それぞれの設備やサービスを、故障にどう備えて作るかを考えます。

まず故障や不具合を減らす工夫をし、それでも起きた場合の対応も設計します。

故障を減らすフォールトアボイダンスと、故障しても必要な機能を保つフォールトトレランスの比較図

故障を減らす備えと、起きた場合に機能を保つ備えを組み合わせます。

考え方

注目すること

例

フォールトアボイダンス

故障や不具合を防ぐ・減らす

適切な設計、部品選定、品質管理

フォールトトレランス

故障が起きても必要な機能を維持する

冗長化して予備へ切り替える

冗長化とは、予備や複数の系統を用意し、一部が故障しても必要な機能を保てるようにすることです。ただし、二台用意すれば、それだけで安心とも限りません。同じ電源に依存していたり、同じ不具合を含んでいたりすると、同時に止まる可能性があります。切り替えが実際に動くか、運用上の確認も必要です。

Sandy「故障を減らすんも、故障したときに備えるんも大事や。どっちかを捨てる話ちゃうで」

フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフを比較する

似た名前でも、何を実現したいのかが違います。覚える手掛かりは、セーフ=安全、ソフト=一部を減らして継続、プルーフ=誤操作に備えるです。

安全を守るフェールセーフ、縮退して継続するフェールソフト、誤操作に備えるフールプルーフの比較図

三つは目的が異なり、同じ装置で複数の考え方が使われる場合もあります。

用語

中心となる目的

学習用の例

フェールセーフ

故障・異常時に安全な状態へ移る、または安全を保つ

故障を検知した危険な装置が、安全のため停止する

フェールソフト

機能や性能を一部低下させながら運用を続ける

一部の受付端末が故障しても、残りで受付を続ける

フールプルーフ

誤操作を起こしにくくし、誤っても危険につながりにくくする

扉を閉めないと加熱を開始できない仕組み

フェールセーフは、「何でも止める」という意味ではありません。安全な状態が何かは対象によって異なり、安全を守るために動作の継続が必要な場合もあります。

フェールソフトは、サービス継続のための縮退運転に注目します。フォールトトレランスに関連する考え方ですが、資料によって分類の仕方が異なるため、用語を無理に一つの入れ子図へ押し込むより、目的を理解しましょう。

また、一つの装置に複数の設計思想が使われることもあります。人の誤操作を防ぐ仕組みと、その仕組みが故障した際の安全確保は、両方必要です。

例外処理:失敗を隠すのではなく、対応を決めておく

プログラムでは、実行中にエラーなどが検出されたとき、例外が発生することがあります。例外処理は、その例外に応じた対応を記述する仕組みです。

たとえば年齢欄に「十五」と入力され、整数への変換ができなかったら、入力し直してもらうという対応が考えられます。

Pythonなら、次のように特定の例外を扱えます。

text = input("年齢を数字で入力してください: ")
try:
    age = int(text)
except ValueError:
    print("数字で入力してください。")
else:
    print(f"{age}歳ですね。")

このコードでは、int(text)で整数に変換できなければValueErrorが発生し、exceptのメッセージを表示します。変換できた場合はelseへ進みます。

ここではメッセージを表示するだけで、自動的に再入力は求めません。 再入力を繰り返すなら、別途ループなどが必要です。また、マイナスの数でも整数には変換できるため、年齢として妥当な範囲かどうかは別に確認します。

入力の事前検証と例外処理は同じものではありません。また、例外をすべて無視して続ければよいのでもありません。再入力、再試行、記録、安全な終了など、状況に合う対応を選びます。

練習:何を防ぎ、何を維持する設計かを考えよう

以下はこの記事のオリジナル学習例です。実際の共通テスト問題ではありません。

問1:電子レンジが正常な状態で、扉を開けたまま加熱を開始しようとしても、作動しません。どの考え方に注目した例?

誤った操作を危険につなげないという点で、フールプルーフに注目した例です。ただし、装置の安全設計全体には、故障時の安全確保なども関わります。「電子レンジはこの用語だけ」と分類しないようにしましょう。

問2:受付端末が四台中二台故障しましたが、残り二台で、処理速度を落として受付を続けます。何に注目した例?

機能や性能を低下させても全体のサービスを続ける、フェールソフトです。故障を起こさない工夫と、故障後の対応は区別して考えます。

問3:部室の一台の端末だけでWebサイトが開けません。インターネット全体の故障と判断できる?

できません。端末の設定、Wi-Fi接続、校内設備、回線、特定サービスなどを切り分けます。まず校内の管理者へ、どこまで確認できたかを伝えましょう。

まとめ:誰も管理しない網ではなく、多くの主体がつなぐ網

文化祭当日、受付端末の一台が故障しました。ユウキは残る端末と、事前に用意した代替手順を使い、受付を続けます。

ユウキ「壊れないようにするだけじゃなく、起きたときの手順も要るんだ」
Sandy「せや。続けることと、安全を守ること、両方考えて組むんや」

  • インターネット全体を一社が所有・運営するわけではないが、各設備やサービスには管理主体がある。
  • 通信には共通のプロトコルが必要。別経路があっても、すべての障害を回避できるとは限らない。
  • 故障を減らす工夫と、故障時に必要な機能を保つ工夫を組み合わせる。
  • 安全、縮退運転、誤操作防止は目的を分け、一つの装置でも組み合わせて考える。

シーズン2で学んだ0と1、文字、色、音、圧縮、情報デザイン、メディア。その情報を運ぶ土台にも、人と技術の約束が重なっています。こうした仕組みを実際のWeb・アプリ制作でも学びたい人は、プログラミングスクールSandboxもご覧ください。

参考資料

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野澤 嘉孝

この記事を書いた人

野澤 嘉孝

ソフトウェアエンジニア/プログラミングスクール Sandbox 代表

ソフトウェアエンジニア。同志社大学理工学部を経て、京都大学大学院で核融合発電の基礎研究(プラズマ物理)に従事。高校生向け数学塾の講師、大学での物理実験の授業を通じて延べ500名以上の学生をサポート。現在は業界特化型SaaSの開発に携わりながら、小中高生向けプログラミングスクール Sandbox を運営。

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