「プログラミング教室は意味ない」は半分正しい。教室運営者が正直に話します

「プログラミング教室は意味ない」は半分正しい。教室運営者が正直に話します

「月謝を払っているのに、子どもが何を学んでいるのかよくわからない」

「体験授業では楽しそうだったけど、本当に身についているの?」

「周りの家庭も通わせているから始めてみたけど、正直、効果が見えない」

もしあなたが今こう感じているなら、その感覚は間違っていません。

この記事を書いている私は、中高生向けプログラミング教室の代表であり、現役のソフトウェアエンジニアです。教室を運営する立場の人間が「意味ない」という声について書くのですから、普通なら「いえ、意味ありますよ!」と反論するところでしょう。

でも、私は正直に話します。この業界には、構造的に「意味のない教室」が存在します。

ただし、すべての教室がそうだとも思いません。だからこそ「半分正しい」なのです。

この記事では、教室の内側を知る人間として、意味のない教室に共通する問題と、意味のある教室を見分けるためのシンプルな判断基準をお伝えします。

正直に言います。「意味のない」プログラミング教室は存在します

同業者から嫌われることを覚悟で書きますが、「子どもをプログラミング教室に通わせても意味がなかった」という親御さんの声には、正当な理由があることが多いです。

子どものやる気が足りなかったのでも、親の期待が高すぎたのでもありません。教室側のカリキュラム設計に、構造的な問題を抱えているケースがあるのです。

私がこれまで見てきた「意味がない」と言われる教室には、3つの共通点があります。

問題①:何ヶ月通っても「完成物」がゼロ

これが最大にして最も深刻な問題です。

毎週教室に通い、何かしらの課題に取り組んではいる。でも、「○○を作った」と子どもが胸を張って見せられる完成物が、何ヶ月経っても1つもない。

なぜこうなるのか。多くの教室では、カリキュラムが「今日はここまで」と毎回区切られる設計になっています。プログラミングの概念を少しずつ教えていくスタイルです。

一見丁寧に見えますが、これには致命的な問題があります。子どもが「自分の力で最後まで作り切る」経験ができないのです。

変数とは何か、繰り返し処理とは何か——こうした知識をいくら積み重ねても、それだけでは「プログラミングができるようになった」という実感は生まれません。料理に例えれば、包丁の持ち方と火加減の座学を半年受けたのに、一度も料理を完成させたことがない状態です。

「今日は教室で何やったの?」と聞いても、子どもが答えられない。あるいは「よくわからない」と言う。これは子どものせいではありません。完成物という「見える成果」を出すカリキュラムになっていない教室の設計の問題です。

問題②:Scratchを何年もやり続ける「Scratchループ」

誤解のないように先に言っておくと、Scratchは優れた教材です。ブロックを組み合わせてプログラムを作る仕組みは、プログラミングの基本概念を直感的に理解するのに適しています。小学校のプログラミング教育でも広く使われており、入門としての価値は間違いありません。

問題は、Scratchに「出口」がないことです。

2年通ってもScratch。3年通ってもScratch。ビジュアルプログラミングの中でずっとぐるぐる回り続けている状態——私はこれを「Scratchループ」と呼んでいます。

本来、Scratchはプログラミングの入口であって、ゴールではありません。基本的な考え方を理解したら、HTML/CSSやJavaScript、Pythonといったテキストベースのプログラミング言語に移行していくのが自然な流れです。

ところが、多くの教室ではこの移行ルートがカリキュラムに存在しません。Scratchで複雑な作品を作り続けることが「上級コース」として設定されているだけです。

「うちの子、いつまでScratchをやるんだろう?」——そう感じているなら、その直感は正しいと思います。

問題③:講師がプログラミングの実務経験を持っていない

プログラミング教室の講師をするために、特別な資格は必要ありません。そのため、教室によっては大学生のアルバイトやプログラミング未経験のスタッフが講師を務めているケースがあります。

本部が用意したマニュアル通りに教えることはできるでしょう。決められた課題を順番にこなしていく分には問題ないかもしれません。

しかし、プログラミングの面白さは「自分だけの作品を作る」ところにあります。子どもが「このゲームにこういう機能をつけたい」「ここをもっとカッコよくしたい」と言い出した時に、マニュアルの外にある対応が求められます。

実務経験のない講師では、この瞬間に対応できません。

さらに深刻なのは、エラーへの対応です。プログラミングではエラーが日常的に発生します。経験のある講師なら原因を素早く特定して、子ども自身が理解できるように説明できます。でも経験がなければ、「もう一度最初からやり直してみよう」としか言えません。これが繰り返されると、子どもは「プログラミングって、うまくいかないと最初からやり直すだけのもの」と思い込んでしまいます。

では「意味のある」教室とは何か? たった1つの判断基準

ここまで読んで、「じゃあどうやって良い教室を見分ければいいのか」と思ったはずです。

チェック項目を10個も20個も並べることはしません。教室を選ぶとき、あるいは今通っている教室を評価するとき、確認してほしいことは1つだけです。

「生徒の作品を見せてもらえますか?」と聞いてください

体験授業や入会面談の場で、この質問をしてみてください。

意味のある教室なら、即座に生徒の作品を見せてくれます。「この子はこんなゲームを作りました」「このWebサイトは中学2年生の作品です」と、具体的な成果物を見せながら説明してくれるはずです。

一方、作品を見せられない教室は要注意です。「まだ制作中のものが多くて……」「発表会のときにお見せします」といった回答しか返ってこない場合、そもそも完成物を生み出すカリキュラムになっていない可能性があります。

完成物があるということは、その教室に「最後まで作り切らせる力」があるという証拠です。逆に、完成物がないということは、どれだけ素晴らしい教材や講師を謳っていても、子どもの手元に残るものがないということです。

補足:もう少し詳しく確認したい方へ

もし余裕があれば、以下の3点も確認するとより確実です。

完成までの期間を聞いてみる。 入会してから最初の作品が完成するまで、どのくらいかかるのか。1〜2ヶ月以内に1つ目の作品が完成するなら、カリキュラムの設計がしっかりしている証拠です。半年以上かかると言われたら、途中で飽きてしまうリスクが高いと考えてください。

Scratchの先のカリキュラムを聞いてみる。 Scratchからテキストコーディング(JavaScript、Pythonなど)への移行ルートがあるかどうか。「Scratchを極めていく上級コースがあります」という回答だけなら、前述のScratchループに入る可能性があります。

講師の経歴を聞いてみる。 講師が自分自身でWebサイトやアプリを作った経験があるかどうか。プロのエンジニアである必要はありませんが、少なくとも「自分で何かを作り切った経験」がある人かどうかは確認した方がいいでしょう。

「意味がない」と感じたら、それは正しい直感です

すでにお子さんをプログラミング教室に通わせていて、「なんだか意味がないような気がする」と感じている方もいるかもしれません。

その直感は、おそらく正しいです。

こんな状態なら、教室の問題を疑ってください

お子さんに「今日は教室で何を作ったの?」と聞いたとき、毎回うまく説明できない。3ヶ月以上通っているのに、完成した作品が1つもない。お子さん自身が「つまらない」「行きたくない」と言い始めた。

これらはすべて、お子さんの能力やモチベーションの問題ではなく、教室のカリキュラム設計に原因がある可能性が高いです。

プログラミングは本来、「自分で考えたものが動く」という強烈な達成感がある活動です。それを感じられていないとしたら、教え方に問題があると考えるのが自然です。

「やめる」は悪い判断ではありません

「せっかくお金を払って通わせているのに、やめるのはもったいない」と感じる気持ちはよくわかります。でも、合わない教室に通い続けるリスクの方が大きいと私は考えます。

最も避けたいのは、子どもの中に「プログラミングってつまらないものだ」というイメージが固定されてしまうことです。一度そう思ってしまうと、将来本当にプログラミングが必要になったとき、心理的なハードルが上がってしまいます。

教室をやめることは「失敗」ではありません。合わないものを見極める力があるということです。やめた上で、別の教室を探すか、独学で進めるかを改めて考えれば大丈夫です。

正直に言えば、独学で十分な子もいます

教室の代表がこんなことを言うのは変に思われるかもしれませんが、すべての子どもに教室が必要だとは思いません。

YouTubeの解説動画を見ながら自分でScratchやMinecraftでプログラミングを始められる子は、教室に通わなくても十分に学べます。今はProgateやドットインストールなど、無料で質の高い学習教材がたくさんあります。

教室が本当に価値を発揮するのは、「最初の一歩を踏み出すきっかけが欲しい子」と「途中で詰まったときに一緒に考えてくれる存在が欲しい子」に対してです。自走できる子には、教室という形にこだわる必要はありません。

この見極めは、お子さんの様子を日々見ている親御さんにしかできない判断です。

なぜ「意味のない教室」が生まれるのか? 業界の構造

ここまで読んで、「なぜそんな教室がたくさんあるのか」と疑問に思った方もいるでしょう。これには業界の構造的な理由があります。

フランチャイズモデルの限界

子ども向けプログラミング教室の多くは、フランチャイズで全国展開しています。学習塾やパソコン教室のオーナーが、新規事業としてプログラミング教室を併設するパターンが典型的です。

フランチャイズの仕組み上、教室オーナーにプログラミングの専門知識は求められません。本部が教材を用意し、マニュアルを整備し、研修を行う。オーナーはそれに従って教室を運営すればいい。これが全国に教室を広げるための効率的なモデルです。

しかし、この効率性が教育の質と相反する場面があります。本部が用意した教材を順番にこなすだけのオペレーションでは、子ども一人ひとりの「こういうものを作りたい」という気持ちに応えることが構造的に難しいのです。

プログラミングの面白さは、決められた課題をこなすことではなく、自分のアイデアを形にすることにあります。この部分は、マニュアル化しにくく、講師個人のスキルと経験に依存します。だからこそ、フランチャイズモデルでは対応しきれないケースが出てくるのです。

「論理的思考力」という便利すぎる言葉

「プログラミングを学ぶと論理的思考力が身につきます」——ほとんどのプログラミング教室がこれをセールスポイントにしています。

間違いではありません。プログラミングには論理的に考える力が必要ですし、その過程で思考力が鍛えられる側面はあるでしょう。

ただ、この言葉には便利すぎる側面があります。「論理的思考力」は数値で測定できないからです。

テストの点数なら上がったか下がったかがわかります。スイミングなら泳げる距離が伸びたかどうかがわかります。でも「論理的思考力が伸びた」かどうかは、誰にも証明できません。

だからこそ、目に見える成果が出ていなくても「論理的思考力は育っています」と言い続けることができてしまう。これが、意味のない教室でも簡単にはなくならない理由の一つです。

本当に価値のある教育成果は、目に見えるものです。子どもが自分の力で作ったゲームやWebサイトを、友達や家族に見せて「これ、自分で作ったんだよ」と言える。この体験こそが、プログラミング教育の核心だと私は考えています。

まとめ

「プログラミング教室は意味ない」という声には、正当な理由があるものも多いです。すべての教室に意味があるわけではなく、構造的に問題を抱えた教室は実際に存在します。

でも、意味のある教室もまた存在します。

見分ける基準はシンプルです。その教室に通っている子どもたちが、自分の力で作品を完成させているかどうか。

もし教室選びに迷ったら、体験授業で「生徒の作品を見せてもらえますか?」と聞いてみてください。その一言で、かなりのことがわかるはずです。

野澤嘉孝

この記事を書いた人

野澤 嘉孝

ソフトウェアエンジニア。同志社大学理工学部を経て、京都大学大学院で核融合発電の基礎研究(プラズマ物理)に従事。在学中は高校生向け数学塾の講師を、大学院では大学生に対して物理実験の授業を担当し、延べ500名以上の学生をサポート。現在は業界特化型SaaSの開発に携わりながら、中高生向けプログラミングスクール Sandbox(サンドボックス)の運営を行う。

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